Top Page GALLERY 2014


【1月の表紙】

2004・01・01 日南線 大堂津−南郷 (PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1))
まだ東京や関西から西へ下るブルトレが残っていた頃、年末年始は天気の安定した九州で過ごすことが多かった。 多少冬型が強くても、宮崎・鹿児島エリアは連日快晴。色味はないが、鉄橋アングルや海バックなら木々の冬枯れは関係ない。 高鍋や佐土原など昔からの名撮影地で迎える被写体は、485系「にちりん」・「ひゅうが」、それにナナロク牽引の「彗星」。 いずれも編成は短いとはいえ撮り応えのある名優たちであった。昼からは南下して日南線へ。こちらも九州色ではあるものの国鉄型気動車が健在だった。 大堂津の七つ岩バックで快速「日南マリーン」を狙う。昼なお低い冬の光線を浴びて、波に洗われる奇岩を背にゴッパ・ニッパがやって来た。

こんな旅を繰り返していたのももう10年前。 先日久々に訪れた九州にはすでにブルトレは1本もなく、少数の415系を除いて遊園地のアトラクションのような新型車両ばかりが行き交うようになっていた。 時代は回る。今年は3月に「あけぼの」がなくなり、数年以内に対北海道ブルトレも姿を消すと報じられている。 さすがに撮るものがないなぁ…。そろそろ年貢の納め時か、いやいっそ納めてしまった方が社会生活上はいいのかも? そんなことを考えている2014年の正月である。



【2月の表紙】

2000・02・25 根室本線 音別−尺別 (MamiyaM645 1000S SEKOR210oF4N RVP(+1))
北の大地のDD51といえば、いよいよカウントダウンが始まるブルトレ牽引と昨秋去就が話題になった常紋臨貨が花形だが、 ちょっと前までは室蘭本線の4091レや富良野線のポテチ臨など、道内各地に渋い貨物運用が残されていた。 その一つが根室本線新富士までの1451〜1452レ。 太平洋バックの名所音別−尺別をいい時間に通過するコンテナ列車は、あまり注目はされていなかったものの、知る人ぞ知る美味しい被写体であった。

駅から徒歩約30分、海辺の丘にはハスキーでも転倒しそうな強風が吹き荒れていた。 常紋〜留萌のSLロケ列車から流れて在道14日目の今日は、夜行の「おおぞら13号」で道東に乗り込み、ここがメインの撮影地。 風がキツイ以外は天気も上々、雪原も美しい。昨年訪問した時は雪もなく、コキはコンテナが2つのみという惨憺たる編成で敗退した。 今日は条件は前回以上、さて編成は?14時半過ぎ、太平洋を背に赤いDDが現れる。更新機ではあるが、コンテナはほぼ満載! ゴーゴーと唸る風に乗って、軽やかなジョイント音が響いてきた。



【3月の表紙】

2012・03・26 日豊本線 杵築−大神 (PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP50(+1))
線路際に群生する菜の花を見て、夕方のポイントはここに決めた。杵築−大神の出原踏切。峠を下る列車をアウトカーブから狙おうとペンタ400をセットする。 日豊本線沿線には、三毛門の鉄橋付近や杵築の大築堤など、時季になると眩いほどの黄色一色に染まる菜の花の名所が幾つかある。 冬でもなければ春というにもまだ早い3月、季節感を求めて訪問するにはうってつけの路線である。 主役はもちろんナナロク牽引の貨物列車。16時45分、踏切が鳴ると、モーターの唸りを山間に響かせて真紅のカマが現れた。

昨年から、ED76の牙城だった日豊貨物にも変化が出始めた。 大分までの1本は臨時化されて実質2往復に減便、南延岡まで下る日中のスジはEF81に差し替えられた。 九州といえば赤い交流機というイメージはもはや過去のものになりつつあるようだ。それでも、季節を運ぶ黄色い花は今年も線路際を彩るだろう。 またこの沿線を今度は銀ガマを求めて訪れてみたいものである。



【4月の表紙】

2001・04・19 姫新線 三日月−播磨徳久 (Mamiya645SUPER SEKOR A200oF2.8 RVP(+1))
春を告げる薄紅色の花びらが散ると、つい1週間ほど前まで枯れ模様だった木々が一気に芽吹きを迎えるようになる。 「山笑う」とはよく言ったもので、ファインダーを通して見る景色が鮮やかに彩られると、モノトーンの世界に食傷気味だった撮影意欲にも俄かに火が付き、 気づけばこの時期は毎年のように薫る風に誘われて線路際を彷徨っていた。 桜の華やかさも捨てがたいけれど、こんなパステルカラーの春を求める旅も悪くない。

この年は、そんなおあつらえむけの時期に姫新線でマヤ検があった。途中うまい具合に長時間停車が数ヵ所あり、欲しいアングルを総なめにできる絶好のダイヤ。 新見寄りから順に追っ掛けて、4発目のアングルとして向日葵畑で有名な三日月の踏切にやって来た。田んぼはまだ眠りから覚めていない。 が、背後の山はほんのり萌黄に染まるこの季節独特の色。まさにベルビアが最も効果を発揮するシチュエーションである。 マミヤ645に200oをセットし、小鳥のさえずりに耳を傾けながら待つことしばし、踏切の音とともにカーブの奥からDE10&マヤ34のコンビが現れた。



【5月の表紙】

2000・05・25 東海道本線 米原−醒ヶ井 (MamiyaM645 1000S SEKOR A150oF2.8 RVP(+1))
四季を通じて様々な姿を見せる田園風景。春の日差しに煌めく水鏡、夏空と鮮烈なコントラストを見せる青田、秋の金色の稲穂にはさ掛け、 そして冬の雪原に浮かび上がる幾何学的なディテール… これらは、我々が最も好んで撮る鉄道情景の代表的モチーフの一つと言ってもいいだろう。 中でも私のお気に入りは、春の水鏡から初夏の田植え直後にかけての表情。鏡の如き水面にお目当ての列車が写り込めば、もう文句なしである。

1年で最も日の出が早い5月下旬、バイト先で見た天気予報では、明日は移動性高気圧が日本列島を広く覆い全国的に晴れるのこと。そうだ、「銀河」を撮ろう! 先日目をつけておいたポイントなら、半逆光に輝くPF+24系をモノにできるはずだ。深夜に仕事を終えると、機材を拾ってそのまま漆黒の1号線をカブでひた走る。 夏を思わせる日中とは打って変わって、夜の冷気はまだまだ春のそれである。寒さに耐えること4時間弱、夜明けとともに撮影地に立った。 朝靄の中、線路の両サイドの田んぼが乳色に染まる。美しい…。手早くセッティングを済ませ、東京から夜通し走ってきた寝台急行を切り取った。



【6月の表紙】

2012・06・15 羽越本線 桂根−新屋 (PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP50(+1))
梅雨前線の到来とともに、桜・菜の花から始まった春の鉄ちゃん戦線が一段落する6月。 しかし、雨天曇天続きの合間に晴れ予報が出れば、それはブルトレ撮影に絶好のチャンスが訪れることを意味する。 日の長い時期にしか撮れないポイントが脳内に浮かび、いてもたってもいられなくなるのである。 この年は桂根−新屋の梅林俯瞰で「あけぼの」を狙った。6月初旬に訪れて、曇り空に敗北を喫したリベンジマッチ。 徹夜で走った甲斐あり錦秋湖付近からは太平洋側のモヤモヤがウソのようなクリアーなドバリ晴れ。 朦朧としながらも通過30分前に現地入りし、ペンタ400タテ・300ヨコの2台切りで「あけぼの」を迎え撃った。

この年はよく「あけぼの」に通った。 5月から9月までの4ヵ月間、深夜の東北道・秋田道を往復したのは実に6回に上る。 編成だけを見るならば何の変哲もない紅いパイチに24系、一昔前ならありふれ過ぎたブルトレの姿である。 しかし、国鉄型の機関車が牽く国鉄型の寝台特急を季節ごとの美しい風景の中撮ろうと思えば、もはや日本広しといえどもここが最後。 まだプレス発表があったわけではなかったが、先が長くないのは誰の目にも明らかだった。そして今年3月、定期「あけぼの」がついに廃止。 それでも今夏は臨時「あけぼの」の設定があるという。昔より大幅に遅くなったスジ、どこで狙うか、今から早くも楽しみである。



【7月の表紙】

2013・07・07 いすみ鉄道 国吉駅 (NikonD800 AF-SNikkor70-200oF2.8VRU ISO200)
長くぐずついていた天気が突如好転した。昨日までの曇天が嘘のように、七夕の日は早朝から雲一つない青空が広がった。 だが日の長いこの時期、自宅でご来光を拝むようではもう遅い。出遅れた私はしばし天気予報サイトを巡回し、近場のいすみに行先を定めた。 しかし今日は普通の日曜日、キハにはもれなくヘッドマークが付いてくる。朝一を紫陽花ピンでごまかした後、一計を案じて国吉駅にやって来た。 名物のタブ交換プレイは無理にしても、何かしらスナップでも…とデジを片手にチャンスをうかがっていると、キハの発車に合わせて駅員氏が登場。 キリリと決まった挙手の敬礼で去り行く列車を見送った。

少年時代、夏が来る度にこんな光景を求めて全国にローカル線を訪ねていた。ボックスシートに身をゆだね、移りゆく車窓を眺めた。 蝉時雨の中、あてもなく降り立った屋根なしホーム一面のみの小さな駅。次の列車までの数時間を、散策や読書で過ごした。 ぼんやりと記憶に残るこうした思い出の片隅には、いつもDMH17のサウンドを響かせる国鉄型のディーゼルカーがいた。 かつての憧憬を求める旅は、今もまだ続いている。選択肢はずいぶん減ってしまったが、さぁ、この夏は一体どこを攻めようか!



【8月の表紙】

2012・08・16 山陰本線 岡見−鎌手 (PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP50(+1))
追っ掛けは一切捨てて、本俣賀のオーバークロスから岡見の展望台に直行した。 今ツアーでどうしても極めておきたかった大本命の撮影地、 納得いくまで構図を練っておきたい。 悩んだ末にペンタは300oをチョイスして天地左右のバランスを見ながらアングルを調整する。準備は万端! 後は汗だくのシャツを三脚で干しつつ、蝉の声と潮騒の音に耳を傾けながら主役の登場を待つばかりである。 カマが足回りまで抜けるチャンスは一瞬のみ。9時少し前、岬の突端に姿を現したDD重連に、狙いすまして1枚だけのシャッターを切った。

かつて「国鉄王国」と呼ばれた山陰も、客レが落ち、「出雲」が消え、キハ181や58・28が去った。それでも白砂青松の海岸線には通称“岡見貨物”が残っていた。 赤いDDの重連運用を拝むため、我々は幾度も本州西端に足を運んだものだった。 しかし、終焉は突如訪れた。昨年7月の集中豪雨で山口線の一部区間が不通となり、そのまま今年3月で輸送契約の打ち切りにより貨物輸送は終了。 不通区間は今月ようやく復旧し、山陰西部では記念の臨時列車も走ると聞く。だが、学生時代から通った名舞台に千両役者はもう来ない。



【9月の表紙】

2009・09・13 水郡線 野上原−玉川村 (NikonF5 AFNikkor20-35oF2.8 RVP100)
9月は季節感の表現が難しい。秋というにはまだ暑く、夏というにはもの寂しい。この独特の空気をどうやって画面に取り込むか? 一つの方法が田んぼの表情をモチーフにすること。稲穂は日一日と金色の輝きを増し、やがて刈田の跡にはさ掛けが並ぶ。これぞ初秋の表情! 1年を通じた田園風景の中で、春先の水鏡と並んでこの収穫を迎える安堵感が私にはたまらない。今年もこんな至福の瞬間を線路際で味わうことはできるだろうか。

この日は珍しく西金工臨の運転日と休みが重なった。天気も晴れ!さて、まずはどこで往路を押さえよう? 水郡線は基本南北に近い角度で走るため、午前遅くのスジは撮りづらい。唯一いけそうなのは、ここだけ線路が東西に振っている玉川村から野上原にかけての区間。 国道から離れて沿線を探ると、林の切れ間の猫の額くらいの小さな田んぼにはさ掛けを見つけた。よし決まり! 有名ポイントでも何でもないが、ここで工臨を狙うことにした。F5に広角ズームを付けて待つことしばし、3軸-2軸の変則的なジョイント音を響かせてDEが姿を現した。



【10月の表紙】

2001・10・31 参宮線 松下−二見浦 (MamiyaM645Super SEKOR80oF1.9N RVP(+1))
この日は未明から文句のつけようのないド快晴だった。池ノ浦で神々しいまでの日の出を迎え、低い光線に照らされるゴッパ・ニッパの修学旅行臨を捉える。 関西地区から伊勢方面への修学旅行列車は来季から京都総合のキハ181に担当が代わると言われており、 ボックスシートの急行型気動車を伊勢湾沿いの景色と絡められるのは恐らくこれがラストシーズン。 これまで加太以東になかなか足を延ばしていなかったことを後悔しながら、気合いを入れて参宮線まで出撃したのだった。

早朝鳥羽に送り込まれた回送列車は、昼頃神戸方面に向けて出発する。定番池ノ浦の海ノ中道俯瞰はまだサイドに光線が回っていないだろう。 確実な順光ポイントとして松下の鉄橋に目を付けた。小高い斜面から標準レンズで見下ろせば、河口を跨ぐ小さな鉄橋の背後に水平線もチラリと写る。 決して絶景ではないけれど、昭和の時代のまま時が止まったような長閑な里の風景。 12時10分、穏やかな秋の陽射しを浴びて、往年の急行列車を思わせる6連のキハ58がファインダーを駆け抜けていった。



【11月の表紙】

2013・11・09 吾妻線 川原湯温泉−長野原草津口 (PENTAX67TTL smcPENTAX300oF4ED RVP100)
八ッ場ダム建設のため新線に切り替えられた吾妻線の岩島−長野原草津口間。 付け替え道路の開通により多くの撮影地が生まれ、特に樽沢トンネルの俯瞰は新たな人気スポットになった。 確かに、これまで見上げかカブリつきばかりだったこの場所を、「日本最短」を表現するにピッタリの角度で見下ろせるようになったのは望外の収穫であった。 それとともに、ダム湖予定地を一跨ぎにする不動大橋からの眺めもなかなかのものだった。多くの人が直下のカーブを狙う中、 私のお気に入りはトンネルを飛び出し、山肌に取り付くように造られた短いコンクリアーチ橋を渡るシーン。 どこかかつての岩泉線グランドマスターを思わせる雰囲気が魅力的であった。

程よく正面にも光線が回り始めたお昼過ぎ、2台の67にそれぞれ400oと300oを付けてセッティング。 紅葉の吾妻渓谷を切り取る最後のチャンスだけに、手抜きなしの機材で勝負したかった。よし、ピント・構図も抜かりなし! 間もなく、遠くに微かにモーター音が響くと、木々の隙間に湘南色がチラチラと見えてくる。後はトンネル飛び出しを待つばかり。 一瞬のタイミングを見計らって左右の手に力を込めた。 あれから1年、もうこの景色の中を電車が走ることはない。



【12月の表紙】

2009・12・29 宗谷本線 雄信内−安牛 (PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP50(+2))
和かんじきはいとも簡単に粉雪に飲まれた。油断すると吹き溜まりを踏み抜き、すぐに腿まで埋まってしまう。 だが、ラッセルの通過まであと僅か15分、立ち止まってはいられない。息を切らせながら最後の急斜面に取り付いた。 尾根筋を回ると、眼下には凍てつく天塩川と二条のレール、そして目の前には幻の名峰利尻のピークが見えていた。 上へ、もっと上へ。時間の許す限り高度を稼ごうと、斜面を這い上がる。最上段でハスキーを立て、ペンタとF5を手早くセット。 もう踏切は鳴り始めている。来た!朱き守護神が檜舞台に登場。夢にまで見た光景が今、ファインダーにはっきりと像を結んだ。

毎年のように年末年始に訪問を繰り返していた宗谷本線のラッセル。 極まれば最高のカットが手に入る反面、気象条件は非常にシビアである。 また、近年フランジャーを上げた回雪状態や上のライトを消した2灯状態など思うような条件で来てくれない場面も増えた。 深夜の音威子府バルブも節電対策なのか照明が点かなくなり撮りづらくなった。それに何より自分の身体がしんどくなった。 さて、今年はどこで年を越すか。レンタや飛行機の予約状況を吟味しつつ、今が思案の時である。



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