GALLERY09 米坂線 四季帳
3.秋の章〜実りの秋・錦秋の秋〜
9月の声を聞くといよいよ“実りの秋”。田園地帯では稲穂が実を結び、大地に黄金色のカーペットが敷き詰められる。そして収穫が終わ
り、朝夕の冷え込みが厳しくなると、山々は一面錦の紅葉へ。米沢盆地と宇津峠、里と山の2つの顔を持つ米坂線が最も輝きを放つ季節の
到来である。台風に始まり秋雨前線に冬型の気圧配置…と厳しい気象条件が立ちはだかるも、数少ない機会を捉え、我々は撮影に熱中した。
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08・09・14 羽前沼沢−伊佐領 PENTAX67 smcPENTAX200oF4 RVP(+1) |
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羽前沼沢の伊佐領側、山の上から谷間を縫うように走るWカーブを見下ろす“明沢俯瞰”は、宇津峠と並ぶ山岳区間のハイライト。A3が
いい光線で撮れる宇津峠に対し、こちらはA1の「べにばな」がベストなライティングとなる。2月の特雪、6月の「あさひ」と何度か登
頂してはいるが、天気が思わしくなかったり、画面奥の小道に車が乱入したりとなかなか極めさせてもらえなかった。今日は08年3回目の
挑戦。三度目の正直はなるか?
立秋を過ぎたとはいえ、山はまだまだ夏の装い。ただ、太陽の高度だけは低くなっている。10時半、ベタベタの順光線に照らされた急行色
が緑の林を抜けてきた。
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08・09・14 中郡−成島 NikonF5 AFNikkor20-35oF2.8 RVP100 |
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このツアーの一番の狙いは中郡の金色田んぼ。田園は季節毎に様々な表情を見せてくれるが、個人的には水を張った直後の水鏡と刈入れ直
前の黄金色が最も美しいと思う。収穫寸前のベストの色付きにはまだ多少早かったが、ベルビア100などの暖色系に強いフィルムなら充分い
い色が出るだろう。午後一発目は、国道沿いから広めのレンズで58・28を捉えてみた。大地の黄色と空の青のコントラスト、それに雲の形が
絶妙であった。
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08・09・14 中郡−成島 NikonF5 AF-SNikkor300oF2.8ED RVP100 |
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今日も夕方から山登り。斜面のススキは一様に背丈ほどまで茎を伸ばし、おまけに穂まで吹いていて登り難いことこの上ない。悪戦苦闘す
ること15分、ようやくいつもの立ち位置に辿り着いた。何とかの一つ覚えのようにペンタ300で構えるが、それだけでは物足りず、F5&
サンニッパの長玉構図も同時にセット。家並みをなるべくカットして、田んぼと列車のみで絵を作る。夕方の斜光線で一層色味を増した風
景の中に、これまた鮮やかな国鉄色が飛び込んできた。
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08・11・15 羽前沼沢−手ノ子 NikonF5 AFNikkor20-35oF2.8 RVP100 |
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山岳路線において、1年のオープニングを飾る春の新緑とクライマックスを締める秋の紅葉は撮影者の最大の楽しみといえる。米坂線もも
ちろん例外ではなく、11月いよいよ山頂から線路際へと錦の彩りが降りてくると、我々の天気予報&運用チェックの目も一層厳しさを増し
てくる。昨年は、そんなベストシーズンに「なつかしの急行べにばな」が運転された。今回は★氏と組んで出撃。別働隊のへっぽこ氏&LI
BERTY氏チームと連隊を組んでキハ with 紅葉狩りと洒落込んだ。
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08・11・15 手ノ子−羽前沼沢 Mamiya645PRO SEKOR A150oF2.8 RVP100 |
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本命の「べにばな」往路は、未踏の“宇津峠逆俯瞰”へ。荒れたダートを数キロもダラダラ進み、電波塔の近くから藪に分け入ると、眼下
に山肌を縫う線路が見下ろせた。A3定番の大築堤を反対側から眺める形で、その奥には低い丘陵地帯が続き、遠くには飯豊連峰の稜線が
うっすらと浮かぶ。惜しむらくは、切り位置となる築堤のすぐ後が紅葉ではなく杉林になっていることだが、それを補って余りある絶景だ。
定時、国鉄色の58・28がゆっくりと峠を下る。バケペンとマミヤの中判2丁体勢でこの光景を切り取った。
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08・11・15 手ノ子−羽前沼沢 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1) |
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「べにばな」の復路は、手ノ子でだいたい15時半。山間部では日没間際の危うい時間である。宇津峠の登り口に当たるS字で構えたが、や
はり秋の日は釣瓶落とし、見る間に線路の手前が翳り始めた。と、撮れるのか!?早く来い、早く来い…誰もが心の中で叫んでしまう、手
に汗握る数分の攻防。いよいよアングルが影に飲み込まれようかというその寸前、踏切が鳴った。
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