鉄路百景 GALLERY02.桜舞う鉄路の物語02

GALLERY02 桜舞う鉄路の物語

2.2004年 四国・山陰桜ツアー

昨年の「くまがわ」に続き、今年も桜巡業はキハ65で幕を開けようと考えた。行き先は、昨年から幾度か訪れている四国。国鉄色復活で盛 岡地区が注目されている今、四国に目を向ける鉄ちゃんは少ない。しかし、色こそ四国カラーになったとはいえ、希少なキハ65が現役バリ バリで活躍する予讃線・土讃北線(阿波池田以北)や、高知の58+28が日中のゴールデンタイムに穴内川の渓谷沿いを踏破する土讃南線、いまだ キハ40系列がほぼ全ての運用を守っている牟岐線など見所は意外に多い。この春は、キハ65と桜をメインに土讃線の箸蔵を目指すことにし た。

4月4日、春期講習を終えて夕方の新幹線で出発。岡山からマリンライナーで瀬戸大橋を渡り、丸亀の駅レンで車を借りる。前夜のうちに 目安として市内の桜の咲き具合を確認して一安心。まさに今がベストのようである。その夜は阿波池田の近くまで南下してカーマルヨ。

土讃北線を中心に撮影しようと考えると、困るのが午前の過ごし方。メインの65+58は午後のスジで立て続けにやってきて夕方の快速「サ ンポート」で高松に帰るという運用なのだ。高知に向かう南線の58+28も発車は11時35分。琴電という手もあるが、今回は事前調査不足に より敬遠。実に手持ち無沙汰なので、とりあえず定番の箸蔵桜ポイントに行ってみる。東西に走る線路を東側から狙うので、本当は65の時 間よりも午前中の方が光線状態はよい。しからばということで2000系の「しまんと3号」を撮影。

04・04・05 箸蔵−坪尻 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
 四国随一の桜の名所を「しまんと3号」が走り抜ける。しかしステンレス特急じゃあねぇ…。

やはり撮るなら国鉄型の方が燃える。そこで徳島線を吟味してみることにした。主力はステンレスの1000型だと思ったが、中には47くらい 走っているかも知れぬ。以前雑誌に載っていた急行「よしのがわ」の写真の記憶を頼りに、辻−阿波加茂間をウロウロし、どうにか撮れそ うな場所を発見。35判300oで切り取れば桜がいい感じで写りこむ。間もなくやってきたのは、期待通りのキハ47であった。

04・04・05 辻−阿波加茂 NikonF4s AFNikkor300oF4 RVP100
 来ましたキハ47!やはり桜には国鉄型がよく似合う。当時は復活国鉄色が盛岡にしかなかった ので、色にはあまりこだわらず国鉄型全般を熱心に追っ掛けていたものだった。

時間も押してきたので、今度は土讃南線の三縄付近へ。ちょうど線路をオーバークロスする陸橋から吉野川をバックに配してインカーブが 狙える。線路脇には桜が並び、ここで58+28の243Dが頂戴できれば文句なしの激Xだろう。ペンタ165o縦位置でアングルバッチリ、あとは 列車が来るのを待つばかり。が、…11時40分、軽いタイフォンとともに現れたのはキハ32の2連であった。うぐぐ。あとで聞いた話による と58スジには極稀に代走でキハ54や32が入ることがあるらしい。何とツイてないんだか。

 04・04・05 三縄−阿波池田
 PENTAX67 smcPENTAX165oF2.8 RVP(+1)
  意図せず撮れてしまったキハ32のXカット。でもキハ32ではとっても撮っ
 ても嬉しくない。

ショックを引きずりながら、今度は間違いなく65+58がモノにできる箸蔵へ向かう。立ち位置には既に地元の鉄ちゃんが1人先着していた。 さすが桜の名所、地元の人はちゃんと押さえに来るものである。ターゲットは、箸蔵13時52分の253Dと14時43分の255D。もう少し間隔が開 いていたら、1本は黒川駅近くの鉄橋で撮りたかったのだが、まあ仕方ない。ビギナーということでまずは箸蔵を確実に頂くことにする。 光線はあまりよろしくはないが、その分透過光で輝く桜の花びらが美しい。

04・04・05 箸蔵−坪尻 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
 満開の桜に出迎えられて、キハ65を先頭にした255Dが猪鼻峠を降りてきた。箸蔵までくれば終 点阿波池田はもうすぐ!

取り敢えず狙いの列車を極められて一安心。返しまでは2時間近くあるので、阿波池田まで降りてみることにした。2本続けてやって来た キハ65+58編成は、阿波池田で併結されて4連になり、夕方の快速「サンポート」として高松へ帰る。4連に組成されたところを、留置線 裏の駐車場から撮れるはずだ。

 
左 04・04・05 阿波池田 PENTAX67 smcPENTAX165oF2.8 RVP(+1)
右 04・04・05 阿波池田 NikonF4s AFNikkor300oF4 RVP100
 阿波池田では、折り返しまで4連で停車中の65・58をバリ順光で撮影。2ツ折扉とズラリと並 んだ2段窓、これぞ急行型!

16時を回ったので、再び箸蔵にターン。今度は駅の跨線橋から桜を絡めて「サンポート」を狙う。吉野川の河岸段丘上にある箸蔵駅からは、 遥か眼下に佃を発車してから吉野川の鉄橋を渡ってくるところまで線路が一望できる。セッティングを終えて川向こうを眺めていると、58・ 65の4連が鉄橋に差し掛かるのが見えた。無人のホームに自動放送が入る。やがて、夕方の柔らかな光線に照らされて、今日の主役がファ インダーに滑り込んできた。

 04・04・05 箸蔵駅 PENTAX67 smcPENTAX165oF2.8 RVP(+1)
  「サンポート」が箸蔵駅に到着。ここからは阿波と讃岐を隔てる難所、猪鼻
 峠に挑む。

本日の撮影は無事終わった。ラジオから流れる天気予報では、明日も西日本は高気圧に覆われ、晴れが続くとのこと。さて、どうしたもの か。このまま四国に残留して黒川の鉄橋で65+58を頂戴するか、時期的に大岩の桜も見頃のはずなので、思い切って山陰まで大移動するか…。 かなり悩んだが、また午前中手持ち無沙汰になるのも効率が悪いと判断し、さっさと車を返して本州に渡ることにした。幸い24H営業(当時) の西明石レンタに問い合わせると、まだBSクラスに空きがあるという。



丸亀でビッツ君に別れを告げ、マリンライナーと普電を乗り継いで、終電間際に西明石着。早速駅裏のニッポンレンタカーでキューブ号を 借り出して、一路北に進路をとった。国道175〜427号と抜けて、梁瀬で9号に合流。八鹿から豊岡を経由して、時折意識を失いながら餘部 鉄橋の真下に着いたのは午前4時頃であった。

2時間ほど仮眠してから活動開始。せっかく山陰に来たので、朝はブルトレ「出雲」様を拝みたい。餘部鉄橋の一帯では、架け替え工事を 前に観光客誘致を図ろうと、地元による大伐採が行われたと聞く。ならば立ち位置が広くなったこの名所中の名所でぜひ極めてやろうでは ないか。ホントは6年前の98年、京都に転居して最初のGWにも訪れてたのだが、何をボケたか、せっかくのバリ晴れ「出雲」を甘ピンと いう痛恨の人為的ミスでフイにしていた。そのリベンジということもある。

早朝から息を切らせて駅への急斜面を上がると、噂の通り、これまでかわすのに苦労していた木々が見事に伐採され、お立ち台が一挙に広 がっていた。視界良好!しかも嬉しい誤算として、橋の袂には満開の桜が彩りを添えている。アングルは完璧!ただ、唯一心配なのは天気 である。神戸海洋気象台が昨夜あれほど「明日も青空が…」と断言していたにもかかわらず、夜が明けてみるとうっすらと白いベールが空 を覆っている。いわゆる薄曇りというヤツである。光線は時に強くなり時に弱くなり何とも不安定。それでもオトコは勝負に出るべしと露 出は強気の1/1000sec f3.5。

定刻7時、「列車が通過します」の放送とともにトンネルに2灯の明かりが光る。光線が強くなった。太陽が雲間から姿を現す。同時に轟 音を響かせて「出雲」が通過!! 斜光に寝台車の屋根が輝き、千両役者は目の前を走り去っていった。思わず一人でガッツポーズ。

04・04・06 餘部−鎧 PENTAX67 smcPENTAX165oF2.8 RVP(+1)
 桜と餘部鉄橋とDD「出雲」。春の山陰を物語る究極のコラボーレーション。立ち位置を広げて くださった地元の方にただただ感謝!

あまりの手応えにしばし呆然としてから、空腹で我に返る。餘部近辺にはコンビニもない。食料調達も兼ねて鳥取方面へ向かうことにした。 餘部が予想以上にXだったが、本来今日の目的は大岩駅。随分昔のダイヤ情報誌に「あさしお」と桜の写真が出ていたが、原色キハ181など と贅沢は言わないので、せめてタラコ47&桜をお持ち帰りしたかったのだ。学生時代の記憶では大岩駅前には確かポプラがあったはずであ る。

大岩の桜はやや時期が過ぎたかボリュームに欠けたが、まぁ絵になるレベルではあった。朝食もそこそこにキハを待つ。だが、9時台のキ ハは来る曇るで撃沈。次の列車は、空模様は安定してきたものの、何と新型のキハ121で、シャッターを切らず見送り。のんびり独り花見 と洒落込んでいるうちに、あっという間に11時になった。運用からいくと次こそはタラコちゃんのはずである。おそらく正面に日が回るの はこのスジが最後だろう。まさかの黄緑イラスト車などが来ないよう祈りながらアングルを最終確認。11時18分、不釣合いに長いホームに 到着したのはタラコ47の2連だった。

04・04・06 大岩駅 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
 大岩駅を発車するキハ47の浜坂行。旧客どころか、12系や50系の客レ時代も知らぬ 私にとっては、これが正しい「国鉄」ローカル線の姿である。

大岩の桜アングルも無事頂戴できたので、続いて東浜の俯瞰に行ってみる。真横から水平線をバックにキハ47!想像するだけでも魅力的な 情景。だが、所詮これは脳内Xアングルだった。実際ポイントに行ってみると、田んぼはまだ耕作が始まっておらず真茶色、水平線は春霞 で行方不明。これでは、ねぇ…。海バックがダメ、ならば海側から撮影するならどうだ!? と踏んで、今度は諸寄の俯瞰に。ここはダイヤ 情報誌の「四季を走る鉄道 夏」に掲載されていたのを見て以来行きたかった場所の一つでもあった。コンビニで昼飯を調達して城山公園 の山に登る。中腹の駐車場から徒歩数分で立ち位置の展望台である。が、やはりここも春霞で視界が白っぽい。ドクリアー晴れでないと海 アングルは無理か〜と撮影は諦め、展望台で花を愛でながら昼食。食後は睡魔に襲われてそのままベンチで昼寝。優雅な午後を過ごす。 たまにはこんなツアーもいいかぁ!

展望台が日陰に入り、寒さで目が覚めた。時計を見るともう16時。おもむろに起き上がって驚いた。日中は半逆光で霞んで見えた諸寄駅が、 夕方の順光時間帯になってスッキリ抜けるようになってきているではないか。これは撮らねばならぬ。時刻表を見ると、次の列車は16時30 分。急ぎ三脚を据え、67&645の中判2丁で臨戦態勢に入る。露出はやや切り詰め気味で1/500sec f5.6。桜咲く諸寄駅に、タラコ47が静 かに滑り込んだ。

 04・04・06 諸寄 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
  16時30分の列車は広めに165oで撮った。その折り返しは300o
 で。海辺の無人駅で少ない客を出迎えるのは、満開の桜だけのよ
 うだ。

17時06分のキハまで粘って撤収。やや空気が靄っていたとはいえ、上々の収穫にハンドルも軽い。香住から県道47号で9号に抜け、村岡町 で一風呂浴びてから西明石へ。営業所には日付変更前に何事もなく帰り着いた。

だが、車を返した後で重大なことに気がついた。電車がない!! 東京へ帰るには最低明朝の初電まで待たねばならぬ。参った!仕方なくバス ターミナルの隅で寝袋に包まり、始発を待って帰途に就いたのであった…。



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