鉄路百景 GALLERY01.鹿島鉄道最後の日々02

GALLERY01 鹿島鉄道最後の日々

2.「かしてつ」詣で2006

「ふるさと駅フェスタ」から数ヶ月が過ぎた。鹿島鉄道には廃止の話が持ち上がり、沿線のボルテージは少しずつ上がり始めている らしい。多少気になりはしたが、結局春の桜シーズンは例年通り小湊鐵道に通い、話題になった東田中や桃浦へは行かずじまいになって しまった。「かしてつ」はもう諦めか、キハはKRが主力だし…。こうして鹿島鉄道の最後は他人事のように過ぎていく…はずであった。

11月、鉄ファン誌のフォトコンに入選された先輩が上京し、「日曜暇なんやけど、どっか(面白い路線)ない?鹿島とかどうなん?」と のお誘い。「なら行きましょう!」とご友人の車で出撃される先輩と現地合流を約束し、日曜未明に出発。ようやく重い腰を上げること になった。まずは行き掛けに石岡の機関区に立ち寄る。以前は中で撮影させてくれた気がするが、近頃はややピリピリしているのか、構内での撮 影は禁止とのこと。仕方なく駐車場から601を1カット。

 06・11・12 石岡機関区 NikonF5 AFNikkor20-35oF2.8 RVP100
  朝日に照らされてキハ601の車体が輝く。現役最古参の気動車とはいえ、磨きこまれたボ
 ディに衰えは感じられない。

先輩御一行は四箇村にいるとのことだが、自分はRM276号の表紙になっていた筑波山バックのアングルを探索に行く。地図で大体の見当を 付け、桃浦から八木蒔に向けて国道から離れた裏道を進むと見事ポイントに辿り着いた。しかし、切り通しの中の狭い踏切から撮るためと にかく立ち位置がキツい。地元の鉄ちゃんと片寄せあってサンニッパ+1.4テレコンを構えるも、やって来たのは残念KR500だった。地元鉄 氏はこれ1発で移動すると言うが、せっかくのバリ晴れ筑波山クッキリの最高条件、これで旧型を撮らねば男が廃る(?)。次のキハでも光線 は当たりそうなので、一人きりで広くなったポイントにゲバを据え直し、待つこと約40分。来た来た、来ました、カーブを切って現れたの は、湘南マスクのキハ431だった。X!!

 06・11・12 八木蒔−桃浦 NikonF5 AF-INikkor300oF2.8×1.4 RVP100
  筑波山を背にやって来た金太郎キハ431。300oにテレコン付きでようやくこの
 画角。夏に奮発してサンニッパとテレコンを購入しておいた甲斐があった。

この一発で火がついた。返しは先輩と合流して定番の浜クロスから四箇村直線へ追っ掛け。しかし、低速運転の大型トラックに阻まれ、タッチの 差でアウト!思うようにはいかないものである。ところが、本日はこれで終了かと諦め「ぼちぼち昼食でもとりますか」と玉里のラーメン屋の暖 簾をくぐろうとしたら、今度は赤金太郎キハ432の通過を目撃。自動的に我々の昼飯は1時間後にシフトされ、追撃体制に入った。だが、残念な がら下りは怪しいスポット雲の襲撃という天災により、返しは67の微妙なピン外しという人為的ミスにより失敗。頑張った割には成果が上がら ず、リベンジが義務付けられる結果となってしまった。



前回のツアーで意外と旧型が走っていること、スジは昼前後の2往復で、キハ431と432が日替わりで登板していることなどがわかった。スジがわか ったら安心して撮りに行けるというものだ。ついでに、小川高校下という駅名からわかるように沿線にはそこそこ学校がある。ということは平日朝に は通学シーンなどのスナップも狙えるということではないか。幸い翌週は平日休みがあったので、早速出撃と相成った。

未明出区で7時過ぎに小川高校下到着。晴れ予報で、家からは星が見えていたのに、いざ現地に来ると深い霧が辺り一面を覆っている。霞ヶ浦という 水分供給源が目の前にあるのだから、秋の朝に霧が出るのもわからないではないが、伊勢柏崎の旧3161レ被KO率100%のわたくしとしてはショックが大 きい。それでもキハからわらわらと高校生が降りてくるシーンをスナップしようととりあえずホームへ。だが、さっきからブレザー姿の自転車が列を成 して国道を快走している。嫌な予感がしつつも7時35分着のキハを待つ。案の定降りてきたのはほんの数人。しかも埴輪ルックのケバケバ女子高生&ズボ ンズリ下げダウナー系男子高校生…↓↓。我がF5ちゃんもやる気が失せたのかAFでピントが拾えず、結局脳内に描いたかつての京阪京津線のような通 学シーンは1枚も撮れずに終わったのであった(泣)。貴重な平日休みを潰して得た教訓は、「ウチのレンズは非Xな被写体にはピントを合わせてくれな いらしい」ということだった。

意気消沈しながら近くのコンビニでパンをかじっていると、目の前をキハ602+714の旧型2連が通過。ナヌッ、これは夢か、幻か!? あとで聞いたところ によると、これが平日限定の通学列車で、毎日この編成が充当されるという。問答無用で追っ掛け体制に入り、朝食もそこそこに八木蒔から榎本へショ ートカットして借宿前へ。線路の角度を見る限り、この近辺なら石岡方に付いているキハ714の正面に日が当たりそうである。ちょうど霧も晴れてきた。 ほど良く駅の榎本寄りに小高い畑があったので、そこからペンタ165oで構える。湘南マスクの半面にだけ日が回る絶妙な光線状態。9時過ぎ、独特のエ ンジン音とともに大型車の2連が帰ってきた。ゆっくりと借宿前の駅を後にするところをバッチリ頂戴することができた。

06・11・16 借宿前−榎本 PENTAX67 smcPENTAX165oF2.8 RVP(+1)
 湘南マスクは前面にベッタリ日が当たるよりも、半面順光半面影くらいがカッコイイのではないか。こういうオペラ座の怪人的光線が私 にとっては最高条件である。

日中は前回と同じく昼前に431、昼過ぎに432が入った。11月も中旬になり、雑木林に囲まれた借宿前付近では紅葉が始まっている。ピークにはまだ早い が、2本の金太郎は定点撮影的に借宿前で頂戴した。

 
2枚とも 06・11・16 借宿前 NikonF5 AF-INikkor300oF2.8 RVP100

色づきはまだ浅いと思っていたが、ポジが上がるとバックの紅葉が結構イイ味を出している。ならば葉っぱが散る前にもう少し色々なカットを押さえねば! リベンジとか、バリエーション揃えるとか、こうして何やかんやと繰り返し訪問するようになって深みにはまるのは鉄の持病みたいなものであろう。それにし ても「かしてつ」の魅力に気付くのが遅かった!!



よりXな紅葉を押さえに鹿島を再訪したのは12月に入ってからだった。11月下旬はライフワーク的存在の大糸線にかかりきりだったのである。ほんと鉄は仕 事以外で忙しい(仕事は…(笑))。この日は朝方茨城交通を吟味してから鹿島入り。狙いは、他のサイトなどでよく目にするもののまだ行ったことがない借宿前 −巴川のオーバークロス、その名も「粟借橋」。一面紅葉の切り通しを真正面から撃てるはずである。

とはいえ、粟借橋は上り向きアングルなので、下りは八木蒔−浜のラーメン屋さんの裏の踏切で。だが、少しずつ人が集まり始めた「かしてつ」、この日は定番 のラーメン屋踏切のはるか後方で鉄がビデオを構えており、そこは入るだ何だとわめき散らしている。仕方なく彼の近くへ行ってみると、手前に製麺工場がドカ ン!ホントにここで撮るんですか状態である。挙句、シャッター音が入るから俺の近くで撮るなと。さすがに嫌になったので別のアングルを探すが、秋らしいモ チーフを絡められる場所がなかなか見つからない。結局時間切れで、榎本付近の踏切にて強引に柿をあしらって1カット。

06・12・02 榎本−借宿前 NikonF5 AFNikkor20-35oF2.8 RVP100
 かなり無理矢理撮った1枚。もう少しサイドに光線が回っていたら良かったが、まぁいっか〜。

そしていよいよ粟借橋。ペンタ300とF5サンニッパをゲバ2本でセッティング。背後の紅葉は今がまさにピーク。秋の気温が高く全国的に 紅葉がいまいちといわれていただけに、これなら充分及第点だろう。F5をモードラ切りっ放しにしバケペンで勝負!

 
左 06・12・02 借宿前−巴川 NikonF5 AF-INikkor300oF2.8 RVP100
右 06・12・02 借宿前−巴川 PENTAX67 smcPENTAX300mmF4ED RVP(+1)
 ここは長タマ向けアングルですな。F5の方が紅葉が強調されてよかった。ペンタはせめて400oで撮るべきだった。しかもRVP(+1)なので
RVP100に比べて紅葉の赤っぽさが弱い。旧RVPはクリームや緑の発色は最高なのだが…。



もう少し紅葉に拘りたかったが、12月に入ってから仕事が忙しくなり、次にかしてつを訪問できたのは暮れも近づいた12月23日だった。この日は、これまで何度 か行っていながら、実はいまいち極まっていなかった四箇村直線が第一の目標。ここは普通に踏切のある道からアイレベルで撮るのが一般的だが、単行のキハを横 がちに撮るのは意外と画面バランスが難しい。それにターゲットの金太郎キハの特徴は湘南マスクにある。やはり撮るなら正面がちだ。しかし普通に正面がちにと っても面白くない。低所恐怖症(?)のわたくしとしては、少しでも高い立ち位置で構えたい。色々勘案した結論は、ここでは踏切に最も近い所からハイアングルで 撮るのが一番Xなのではないかということだった。

そんなわけで、この日は四箇村の踏切に直行…するつもりだったのだが、いつもよりやや遅く出発したせいでR6恋瀬橋の渋滞にドハマリ。恋に嵌らず渋滞にだけ 嵌っていれば世話はない(汗)。結局かしてつ沿いのR355に入るまでに30分近くを要してしまった。お陰で列車の時間はカツカツ。アングルに着いてゲバを立てるや 踏切が鳴る…。やって来たのはキハ431+432の金太郎ダブルであった。仕方なく、F5のみ手持ちで「ええいっままよ!」とモードラを回す。後日上がりを見ると、 偶然というか何というか、Xに極まっていた。めでたしめでたし。

 06・12・23 四箇村−常陸小川
 NikonF5 AFNikkor80-200mmF2.8 RVP100
  事前の情報を全く探っていなかったので知らなかったが、この日はイベントで金
 太郎が重連になっていた。被写体としては面白いが、大型のHMがいただけない
 のと、2両で1運用になると撮影効率が下がるのが痛い。この日は昼過ぎの旧型
 スジにはキハ601が入った。

返しはベタだが浜の国道クロスへ。重連だしアップで撮ってよしとしよう。やや正面がちからペンタ400を構え、1両目が若干首を振ったところを狙う。1年で一番日が 低い時期だけに真昼間とはいえオレンジがかった柔らかい光線で、被写体がいい感じで照らされそうだ。

06・12・23 浜−玉造町 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
 オペラ座の怪人光線を浴びて金太郎重連が行く。こうして見るとわかるが、キハ432の方がク リームが黄色っぽい色をしている。

昼前のスジで金太郎が2両とも出てしまったため、午後からはキハ601がメインの被写体になる。とりあえず四箇村の直線へ。午後の早い時間だと、ここはかなりサイ ド寄りから光線が当たるので、普段は平面にばかり見えている食パンキハの微妙な3面折妻が浮かび上がるかなという算段である。今度こそペンタ400のハイアングルで構 え、獲物を待つ。踏切の警報機の音とともに現れたキハの正面には、見事に3面のグラデーションが現れていた。

06・12・23 四箇村−常陸小川 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
 湘南マスク同様、コイツも顔に陰影が付くくらいがカッコイイ。側面が渋いだけにイケ面でな いのが残念なキハ600だが、これなら合格点ですかねぇ。

返しは、以前下見はしたが先送りにしていた鉾田のオーバークロスへ。正直バックに家は入るし大したアングルではないが、バリエーションの一環として押さえておこう かという軽いノリでセッティング。だが、確かに背後は多少ゴチャゴチャしているが、真冬の午後のエロ光線に照らされればそんなものは小さな心配、絶妙な光で旧型が捉 えられるならそれでいいぢゃないですか!

06・12・23 鉾田−坂戸 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
 鉾田のオーバークロスを行くキハ601。アングル的にはB級だが、見下ろし気味で撮れる貴重 なポイントである。

鉾田クロスで撮った理由はもう一つ。ここからだと榎本から八木蒔にショートカットする県道を抜けて、桃浦近辺に余裕で先回りできるのだ。そんなわけで即撤収の追っ 掛けで桃浦−小川高校下のシルエットアングルに移動。計算通りモノ通過10分前に現着し、立ち位置吟味。これまでは車両の足回りまできれいに湖面に抜こうと地べたから 狙ってばかりだったが、それでは車体が対岸に重なってシルエットが潰れてしまう。ならば車体がバッチリ影になるように、今日は国道斜面からの俯瞰で勝負!タイフォン 一声、桃浦を発車したキハは、湖面に長い車体の影を映しながら走り去っていった。

06・12・23 桃浦−小川高校下 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
 シルエット撮りもやっぱりベストは旧型キハ!特に元国鉄キハ07のこの車両はサイドビューが 「売り」である。湖面に抜けたロングボディ、かっこいい…。ちなみに、年が明けてからは連日の乗り鉄によるフィーバーで車内はスシ詰 め、窓の向こうが透けなくなってしまったんだそうな(汗)。

旧型キハの運用はこれにて終了。ぼちぼち帰るつもりだったが、よく考えると世間様は明日がクリスマス・イヴとやらで盛り上がっている。ケッ、何がクリスマス、イエス= キリストの誕生日だ!4世紀になって捏造したウソっぱち誕生日のクセに〜!!とあんまり言っているとバチが当たりそうなので、大人しく常陸小川の駅へ向かう。そう、この 時期かしてつの主な駅にはクリスマス・ツリーが飾られているのだ。改札口とこれを絡めて撮るのもまた一興、という狙いである。

とはいえ、まだ日没前。ツリーに巻きつけられたイルミネーションは点灯していない。これではつまらぬゆえ改札付近でスナップを少々。やはりローカル線を撮るなら 「人と鉄道」というテーマは外せない。ちょうど出札口の向こうに日が落ちるので、日没までひたすらシャッターを切った。
 
2枚とも 06・12・23 常陸小川駅 NikonF5 AFNikkor20-35oF2.8 RVP100

日が落ちて、駅舎内のクリスマス・ツリーを撮る。しかし、上がりを見るとなぜか全てピンが外れていた。AFで広角で結構絞ったバルブでピンが合わぬとはこれ如何に?? もし やクリスマスが何ぼのもんぢゃい!と息巻いたわたくしが悪かったのだろうか。主よ♥ごめんあそばせ、アーメン♪



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