撮 影 機 材 紹 介 〜PENTAX67システム〜


PENTAX 67  もう10年来我が主力機であり続ける、鉄ちゃん界中判カメラのスタンダード、ペンタックス67。かつてRMの鉄道写真特集で称賛されているのを見て、 往年の聖地常紋で達人諸氏のハスキーの上にズラリと鎮座しているのを目の当たりにして、喉から手が出るほどこのカメラが欲しかった。だが、当時の67 セットは中古でさえまだまだ高価だった。貧乏学生に機材一式を揃える資金力があるはずもなく、憧れはあくまでも憧れでしかなかった。
 転機は学生時代も末期の2001年秋。 大学OBの関西-D.W先輩が67U導入に伴い旧型を放出するとのことで金銭トレードが成立し、晴れて我が家にバ ケペンが配備されることになった。実際使ってみて、低く重いシャッター音に痺れた。67版ならではの緻密な描写に驚嘆した。以来このカメラの虜にな り、一緒に全国各地を渡り歩いてきた。
 その間にカメラ界も大きく変わった。デジカメの発達は目覚ましく、気付けばフィルムという言葉は死語になりかけている。撮影地で裏蓋でも開けよう ものなら、若い鉄ちゃんに「カメラ割れてますよ!」なんて心配される始末。それでも、私は1枚1枚真剣勝負で撮るワクワク感が忘れられず、いまだに コイツと共に旅を続けている。その旅路が1日でも長く続くことを祈りながら。
PENTAX 67TTL  時代に逆行するとはこういうことを言うのだろうか。 かつての 67ユーザーたちが銀塩から足を洗いデジへの移行を進める中で、2011年秋、私は敢え て 2台目のバケペンを導入した。  現在メインで使用している個体は、レリーズが使えなくなった以外はピントもシャッターも絶好調。入手以来10年間メンテナンスフリーでバリバリ活躍 しているのだが、今後も続く鉄ちゃんライフと銀塩カメラの先行きを考えると、今のうちにバックアップをとっておいた方が良いのではないか…。そんなリ スクヘッジの必要性を感じ、中古市場を物色したのだった。
 Uが好きではない私は、初代67の後期モデルを狙う。相場は一昔前が嘘のように崩れており、オークションで探っても美品で3万円余り。保険だと思 えば十分な値段である。というわけで、信頼できそうなストア出品の個体を競り落とし、早速新宿のサービスセンターへ。診断の結果は、「1/1000秒がや や遅くて1/800秒で切れてますが、まずは問題ないでしょう」とのこと。ま、バケの1/1000 は1/1000 ないと思えと昔から言われているし、こんなもんでし ょ!早速10月にいすみ&小湊でバケ1号機と並べて試運転。55oで見上げたコスモス&柿アングルで見事にキハ52を極めることができた。
 よし!これであと数十年は我が鉄ライフは安心♪なはずである…たぶん。



smcPENTAX67 55oF4  最近になって1本手に入れておきたいと思うようになった 67用広角レンズ。そもそも普通の鉄写真では常用は望遠だし、列車の見かけ上の速度が速くなる 広角アングルは中判ではブラさず止めることが難しい。だが、真下を見下ろすような俯瞰や水平線とか山並みをガッツリ入れたワイド構図を作るのに90oでは 物足りなさを感じることがままあったのも事実である。 2010年秋、紅葉戦線に向けてヤフオクを探っていると、美品の55oが1万8千円で出た。45oとどちら にするか迷っていたが、この値段なら迷わず「買い」である。 クリック一発、その週末には丁寧に梱包された55oF4が到着した。外観・レンズ共にピカピカの新 同品。実に有意義な買いものであった。
 初陣は秋の二ツ井−富根。パイチの貨物を金色田んぼガッツリの構図で撮った。仕上がりを見て、周辺部の光量落ちにビックリ。まぁ、広角レンズをほぼ絞り 開放で使うのだから致し方ないといえばそれまでだが、これは衝撃的であった。でもナントカと鋏と55oも使いよう。翌月の田子倉で極めた「ぐるり」は1段余 り絞って f5.6ちょいで切ったところ、それほど不自然ではない仕上がりになった。とにかくまだ実戦投入から日が浅いレンズである。使い込むうちにその良さ がわかっていくことだろう。
smcPENTAX67 90oF2.8  バケペンの標準レンズには90oF2.8と105oF2.4があるが、現在私が愛用しているのは90o。67ボディを手に入れた翌年、社会人1年目の初月給で買ったのは 105oだった。しかし、近景はいいものの俯瞰での遠景の描写が今一つピリッとこない。67前オーナーのD.W先輩に伺ってみると、先輩は90oを付けて絶好調 だったとのこと。 相性?というのもあるのかも知れない。2003年初秋、山陰の“なにわ”御召を前に私も105oを手放し90oに乗り換えた。
 90oにして良かったのは、描写力云々よりもその画角。普通の35判換算50oよりもさらに一回り広く周囲の風景を取り込めるので、 バックの山のピークが、手 前の海岸線が余裕を持ってアングルに収められるのである。 中判はフォーマットが大きい分、風景の中に列車を置いてこそ真価を発揮する。そういう意味でこの 選択はベターであった。
 ただ、やっぱりピン合わせが難しいんだよなぁ〜。画角上しょうがないんだけど、列車がブレやすいんだよなぁ〜。 かなり手なずけたとはいえ、未だにアングル によっては使うのに勇気がいるレンズではある。
smcPENTAX67 165oF2.8  画角よし、明るさよし、描写力よし!誰もが認めるペンタ67シリーズの銘玉である。カメラ及び天体写真に詳しい我が勤務校の地学部顧問も、「まさに神レンズ」 と太鼓判。収差にウルサい天体写真の専門家が言うのだから、その実力に偽りはない。
 導入は社会人デビューした2002年の春。105oに次いで2本目の67レンズであった。 これらを持って、緑の日に新緑眩い只見線に出撃した。第一鉄橋俯瞰、早戸 俯瞰、柳津の磐悌バック大俯瞰など奥会津を代表するアングルをこのレンズで切り取る。仕上がったポジをルーペで覗いて、遠景でもキハ40の窓のエッジがキリリと シャープに出ているのに感動した。
 描写だけではなく、開放F2.8というのもスバラシイ。低感度フィルム使用なのにときに1/1000secのシャッターを切らねばならない鉄道写真では、大口径は大きなア ドバンテージ。まさにこのレンズはどんな勝負どころでも活躍できるマルチプレーヤーなのである。 そんなわけで、全国各地に点在する“パーゴアングル”は、デジ全盛の今でも165oの独壇場である。
smcPENTAX67 200oF4  同じ中望遠でも165oとは似て非なる画角を持つ200o。 開放F4という明るさにちょっと二の足を踏んでいたが、 結局165oを買った翌月にに若さと勢いに任せて購入し てしまった。ところが、このレンズ、時おり謎の甘ピン現象が発生する。フィルム浮きか? でも他のレンズではこんなことはない。 おかしいなぁ。個体差のせいかと思い、 一度中古市場に放出して別のレンズを買い直すも、症状は変わらず…。だが、使い込んでいるうちにクセがつかめてきた。原因はわからないが、とにかく恐ろしく 前ピンになるのである。ん?だったら、切り位置のかなり後にピンを置けばいいのか!
 感覚を覚えてからはある程度Xを極められるようになった。でも、ファインダーがアテにならないのだから、おっかないと言えばおっかない。というわけで、最近は もっぱら俯瞰での使用が増えている。遠景を撮るなら迷わずピントリングを無限遠に合わせればよし。どんなにカツいタイミングでも、セッティングは一瞬である(笑)。 普段は165oの影に隠れてはいるが、ここぞというときに“電柱1本”をかわす最後の切り札として、コイツは常に銀箱の中に控えている。

※なお、この前ピン現象は個体差と思われるので、読者諸兄はあまり真に受けないように(汗)。
smcPENTAX M★67 300oF4ED  私が67に手を出す前年、300oがEDレンズにリニューアルされた。性能は抜群に良くなったらしい。だが、値段も恐ろしく立派になってしまった。 残業代は出ないのに寮 費はガッツリ取るブラック企業の新入社員にそんな金銭的余裕はない。しかし、新緑の押角俯瞰で借り物の旧300oを使って、ピンの掴みづらさに愕然。こりゃあ今から買う ならEDしかない!と踏ん切りがついた。その数ヶ月後、スズメの涙程度の初ボーナスを全額投入して新型300oがめでたく銀箱に収まることになった。
 今から振り返ると、この時の選択は大正解。このレンズ、とにかくキレる。ファインダー上でピントのヤマがはっきりわかり、上がったポジもルーペで見るとエッジのシャ ープネスが秀逸。400oを持たなかった頃、ここ一番での勝負で力を発揮してくれたのは紛れもなくコイツであった。現在も、風景を入れつつちょっと列車を大きめで…とい うアングルで大活躍。135o近辺の画角が好きな私としては、大のお気に入りレンズなのである。
 ついでに、このレンズ、645判に付けると180o相当のレンズとして使うことができる。マミヤ645システムには、300oが超弩級のF2.8か暗いF5.6しかないためいざという時 にはアダプターを介してコイツが頑張ってくれている。
smcPENTAX M★67 400oF4ED  鉄ちゃんの間でペンタ67シリーズ最強のレンズとの呼び声高い400o。 その風貌が醸し出すオーラは並々ならぬものがあり、学生時代、常紋峠の山中でハスキーの雲台に 鎮座したこのレンズの砲列を見て、旧式のマミヤ645を構えた私は一人肩身が狭かったのを思い出す。当時のR●誌では、このレンズで撮影された、激浅の被写界深度で列車 の顔がクッキリと浮かび上がった編成写真や山々の葉の1枚1枚まで認識できるのではないかと思えるような緻密な解像度の俯瞰写真が毎号見開きで掲載され、誌面を眺める だけで唸るような描写力が伝わってきたものだった。
 しかし、それだけのレンズゆえ、お値段も定価70万円、実売50万円也。とても学生や新社会人には手が出るものではなかった。それでも清水の舞台を飛び降りたのは2004年。 夏期講習で荒稼ぎしていた頃、帰宅途上の中古カメラ屋で新同品のペンタ400o お値段 35万円也を発見してしまったのである。給料日まであと3日。頭金を払ってキープをお 願いし、気付けば銀色のトランクが我が家に運び込まれていた。
 以来全国各地でこのバズーカ砲が大活躍。デジ全盛となった昨今ではあるが、コイツがある限りフィルムカメラはやめられない。



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