GALLERY09 米坂線 四季帳
1.春の章〜若葉が山を包む頃〜
少年時代、18きっぷで全国のローカル線を乗り歩くことから鉄ちゃんの世界に踏み込んだ私にとって、最も魅力ある被写体はやはり風光明
媚なローカル線を行く国鉄型気動車である。もちろんカラーリングはオリジナルの国鉄色が一番!だが、そんな魅惑の鉄道情景ももはや風
前の灯。キハ52、58・28、40系など多士済々の気動車群が集結する東日本管内最後の楽園、米坂線にも新型気動車の投入が始まった。タイム
リミットはもう目の前。昨年来、天気を見ては米沢盆地に車を走らせる週末が続いた。
分水嶺の宇津峠に遅い芽吹きが訪れるのは、例年5月も下旬に入ってから。新緑の進み具合と週末の天気、それに気動車の運用がピタリと
合うのを待つ日々が幕を開ける。06年は第3週末に全てが見事にシンクロしたが、残念ながら私は盛岡ローカルに出撃中。中郡俯瞰で撮影
していたコサカミ氏からリアルタイムのX報告を受け、いつか自分も極めてやると心に誓っていた。
|
08・05・17 手ノ子−羽前沼沢 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1) |
|
それから2度目の春のこと、ついにチャンスはやって来た。土曜のA3運用に国鉄色58・28が登板との情報を得て、チバラギ氏とスクランブ
ル発進!翌朝の定番撮影地は朝も早いうちから大盛況であった。全国から馳せ参じた鉄の数およそ20名。快晴の空の下、淡い緑に染まる大
築堤にピカピカの急行色が姿を現した。
|
左 08・05・17 羽前沼沢−伊佐領 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
右 08・05・17 越後金丸−小国 NikonF5 AF-SNikkor300oF2.8ED RVP100
|
|
この季節、沿線はどこも若葉色。暖色系の国鉄カラーに萌える黄緑が良く似合う。米沢方に国52が入ったA1運用は、後の新潟色を隠して
真正面から狙った。坂町方のみタラコのA56運用も、小国−金丸の第四荒川橋梁で正面撃ち。やや影がキツいが、初夏の強い日差しを浴びて
トラスを抜けるタラコ40をサンニッパで切り取った。
|
08・05・17 中郡−成島 NikonF5 AFNikkor80-200oF2.8 RVP100 |
|
手ノ子以西の山越え区間と並ぶ米坂線のもう一つの顔が、米沢盆地の田園地帯。季節毎に表情を変える田んぼとキハの取り合わせは、いつ
も我々を楽しませてくれた。A1・A3運用メインでの出撃が多かったこともあり、午後は毎回のように中郡付近で三脚を立てていた。
|
08・05・17 中郡−成島 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1) |
|
藪を掻き分けながら斜面を直登していると、頂上付近で突然視界が開けた。鏡を並べたように水を張った田んぼが空の色を映す中、細い線
路が真一文字にどこまでも続く。日が傾いてきた。景色は少しずつ赤味を帯び始める。17時20分、A3運用の58・28がやって来た。遠くで踏
切が鳴り、単調なジョイント音が響いてくる。夕日に照らされた米沢盆地を、急行色はいつもと変わらぬ様子で軽やかに駆けて行った。
|
08・05・17 中郡−羽前小松 NikonF5 AFNikkor80-200oF2.8 RVP100 |
|
1日の締めは羽前椿から米沢に帰る1132D。いくら日が長い5月とはいえ、18時近くともなると撮れる場所は限られてくる。俯瞰から降り
た我々は、水鏡を求めて羽前小松方面に向かった。
至って普通の構図だが、踏切から105ミリで構える。日はさらに山の端近くに高度を下げ、光線も妖しさを増してきた。間もなく、車体を茜
に染めた58・28がファインダーに現れた。
|