GALLERY03 姫川渓谷に国鉄色を追って 〜春〜 2.フォッサマグナに風薫る頃 2005 〜平岩以南〜 GW最終日の5日から仕事が再開し、そのまま金曜まで出社して土曜夜からまたも大糸に出撃。たった数日でどれくらい新緑が進んだか不 安ではあったが、とりあえず晴れ予報が出たからには行かねばならぬ。忙しいなぁ(笑)。今回はいつもの中央道ではなく、関越〜上信越道 を経由し、長野ICからオリンピック道路を回って南小谷へ。まずは定番のツンピークバックで朝一のキハを待つことにした。空気の澄み具 合や残雪は文句なし。だが、惜しむらくは手前の田んぼに水が入っていなかったこと。芽吹きもまだ一歩浅い気がする。でも贅沢は言うま い、この光景の中、国鉄色のキハ52が登場してくれるのだから!8時少し前、ツートンの115号がファインダーに姿を現した。
朝一の南小谷往復がツートンだったということは、今日の午前はタラコが主役。強烈な朱一色のボディは淡い緑に良く映える。木々の様子 をうかがいながら、北小谷方面へ車を走らせた。やって来たのは中土の鉄橋付近。鉄橋を中心に国道から俯瞰してもよし、河原から見上げ てもよし、集落に上がって中土寄りの川沿い区間を見下ろしてもよしと絵作りの範囲は広い。川の水はまだ濁り気味だが、若葉の緑を買っ て川沿いの俯瞰で構えてみた。
タラちゃんは南小谷8分停ですぐに折り返してくる。あまり時間もないので、手っ取り早く国道からの鉄橋下ろしでセッティング。スノー シェッドの工事が進み、以前に比べて立ち位置の自由度が限られてきたが、ここは敢えて周囲の木々を入れて広角で画面を構成した。上の 写真の川沿い区間をカッ飛んで来たキハは、トンネル内で大きく減速し、歩くような速度で鉄橋上に現れる。これでもかとモードラを回し て春の情景を切り取った。
昼前後は平岩のサファリパーク跡で過ごすことにした。というのも、フォッサマグナに沿ってひたすら北上する大糸北線では、基本的に線 形は南北一直線。ゆえに、昼前後はほとんどのアングルで南側正面にしか日が当たらない。数少ない例外の一つが平岩−小滝の鎌倉山トン ネルの手前、すなわちサファリから見下ろす区間なのである。当時は今ほどアングルを知らなかったこともあり(今も大して変わらない気が するが… 笑)、ここで日向ぼっこと洒落込んだ。だが、世の中そんなボケーッとしながらXが頂戴できるほど甘くはない。11時台の南小谷 行きタラコは薄雲で光がデフューズされ撃沈、返しはほぼ激晴れなれど背後の山にスポット雲の陰が落ちてマンダ〜ラになり敗北、3発目、 午後一番のツートンでようやく完璧に仕留めることができた。ちょっと前世からの宿業?を感じた2時間であった。 ちなみに、敗北したかと思われた返しのタラコは、ギリギリのところで画面内には陰が落ちずXだった。ホッ…。
ここを極めた後はGWに撮った妙義山風岩山バックに行ったが、今日はシャッター切り遅れて失敗。夕方からは薄雲が広がってきて、天気 予報も悪化。今ツアーはこれにて早々の撤収と相成った。 前回のツアーでは、やはり南小谷近辺は新緑にはやや早かった。雪融けの影響が残っていたのか、姫川の水もまだ澄んだ色とはいい難かっ た。どうしよう…いや、行くしかなかろう、リターンマッチ!心中の葛藤に3秒でケリをつけ、13日の金曜も帰宅後すぐにハンドルを握っ た。今度の第一目標は、水がきれいになったことを期待して、中土の川沿い俯瞰。淡い緑を多めに入れ165or200oの横位置で構えてみたい。 脳内に現れるXゴマの幻覚を必死で振り払いながら独り深夜の中央道・長野道を駆け抜け、6時頃南小谷のローソン駐車場に滑り込んだ。 今日は福井からコサカミ氏も出撃されるという。電波が入るうちに氏に行き先を伝え、リポDでドーピングしてから中土の川沿い俯瞰へ乗 り込む。ここは普通にロータリー車が留置されている道路の先から撮ることもできるが、上の集落からの方がより角度がつく。間もなく到 着したコサカミ氏とともに銀箱担いでエッチラオッチラ石段を上がり、突端のガードレールに沿ってセッティングした。と、背後から、お 前らは何なんだブツブツというお説教が…。見るとジャージ姿の隣家のご主人がこちらを睨みつけている。何か悪いことしたかいな?心 当たりも無いのでご主人の戯言に耳を貸すと、曰く先週からワシの見知らぬ者が度々ココに来ておる、ここはワシの道路である、従ってワ シに挨拶なくゲバを据えることまかりならん!どうせお前らみんな仲間だろう、聞いてないのかオラ〜といった内容の無限ループ(汗)。い やいや、1点目は私に言われても知りませーん。2点目は、ホントですか?どうみても公道なんですが。3点目、初めからそこにいらっし ゃったんなら挨拶もしますが、早朝から1軒1軒挨拶回りしたらそっちの方が迷惑でしょう。4点目、仲間だろう?って勝手に推測されて も…。てかあと5分で列車来ちまうんだけどなぁ。今さら引き下がるわけにもいかないので、大人しくオハナシをご拝聴申し上げ、どうに かお引取り頂いた。やれやれ、やっと撮影。朝から苦労は多かったが、写真の方は狙い通り、ツートンカラーが新緑の谷間に輝いた。
9時台の南小谷往復は、すぐ下の鉄橋にて狙う。かつて大氾濫で線路を寸断し、長らく大糸線を運休に追いやったほどの暴れ川姫川も、現 在は各所の護岸工事ですっかり人間に飼い馴らされたように見える。だが、この付近では荒々しい岩肌が剥き出しで、往時の「姫」のお転 婆ぶりがうかがえる。他に鉄ちゃんの姿は無いので、思い切って河原まで降り、ワイド目20oで岩場の新緑まで取り入れることにした。遠 景に小さく配しても、タラコ色の存在感は失われないはずだ。
11時台のタラコは、コサカミ氏にサファリパーク俯瞰をご案内し、その後は北小谷の「くの字」へ。2001年、氏とこの場所でDD15のラッセ ル試運転を撮った。ラッセル自体は1日1往復のみだったため、当時は白・緑の塗装ばかりだったキハ52も、希少な形式ということでずいぶ ん真面目に追い掛けた。あれから4年後、まさか52に国鉄色が復活し、こんなに毎週訪問することになろうとは!そして、白緑に対しては シャッターすら切らなくなってしまおうとは…(笑)。やがて、新緑全開のアングルを、午後一のツートンがゆっくりと走り抜けた。
ツートンの返しは、冬からチェックしていた李平の俯瞰に登る。登るといっても集落の裏山の斜面からで、積雪期にカンジキで雪中行軍し たのに比べればはるかにお気楽である。午後になって遠景がやや霞んできたが、ベルビアパワーをもってすれば全然問題なし!水の入った 棚田を横目にキハ52が里を行く。小さな鉄橋にさし掛かったところでレリーズ!!X。
しかし、問題はこの後起きた。さぁ撤収と荷物を積んでいると、山菜泥棒と勘違いされて地元のおっちゃんから炎の追及!スゴい剣幕で問 い詰められたが、つとめて冷静に事情を話し、機材を示してようやく一件落着した。まったく今日は職務質問の多い日である(苦笑)。以来、 このポイントはコサカミ氏との間で「北小谷の山菜ゴルァアングル」と呼び習わされている…。 夕方は南小谷の俯瞰へ。ここでは、畑仕事をしているオバチャンに一言断ると、「いい写真撮っていってね」と快い返事が返ってきた。が、 いざ構えてみると、下界がかなり霞んできている。これはイカン!申し訳ないがオバチャンに再訪を誓い、速攻で下山してS字カブリツキ にターゲットを変更。5月の光線はまだまだ強く、アップだったら問題なくバリ晴れ写真である。16時直前、2灯のライトがスノーシェッ ドを抜けて現れた。
最後の締めは、やっぱりサファリ俯瞰。ここはレンズによって様々な切り取り方ができる上、日中も夕方も両方撮影できるので、仲間内で は「困ったらサファリ!」がもはや合言葉のようになりつつあった。すでに夕刻、もうこの場所に他の鉄ちゃんはいない。1発目の糸魚川 へのツートンの返しは、後追いがわからぬようペンタ165で広めの構図をとった。こうして鳥瞰すると、日本列島ド真中の谷間を大糸線が縫 うように走っている様がよくわかる。
2本目は根知交換でやって来る17時過ぎの平岩返し。こちらは、迫りくる影をかわすべく、日の当たった部分を中心にペンタ300で切り取る ことにした。17時を回った頃、鎌倉山トンネルからタラコが登場。夕暮れ間近のフォッサマグナに、キハ52のエンジン音が低く響いた。
今日もタラコ&ツートンを1日中ノンストップで追っ掛けまわしてしまった。これで昨日から24時間連続活動。好きでやっていることとは いえ、さすがに疲労困憊である。南小谷ローソンのすぐ近くにある下里瀬温泉では、気付けば湯船で力尽きていた(汗)。先日チバラギ氏に 頂いた「10秒で寝る男」の称号に偽りはない。 明日は天気が崩れるらしい。安全運転でゆっくり帰ろう。案の定、豊科から長野 道〜中央道経由で帰路に就いたものの途中の双葉SAでダウンし、気付けば翌日曜の未明であった。天気は雨。安心して二度寝し、昼近くに なって家に着いた。
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