鉄路百景 GALLERY02.桜舞う鉄路の物語04

GALLERY02 桜舞う鉄路の物語

4.2005年 磐東〜飯山DL&桜ツアー

桜前線は、だいたい1週間毎に太平洋沿岸、中部・北関東、南東北、北東北という具合に日本列島を駆けてゆく。従って、単純に言えば我々 週末カメラマンにとっては、桜のベストショットというのは1年に1地域1チャンスしかない。当然この時期は天気予報を見る目もいつも 以上にシビアになる。幸い2005年はかなり天候に恵まれた。先述の樽見鉄道ツアーの翌 週、4月最後の週末も晴れ予報。桜前線は福島・長野・新潟辺りまで北上しているはずだ。ダイヤ情報誌によると、03年以来恒例の「あぶく ま新緑号」が今年もこの土日に設定されている。また、24日日曜には飯山線でチキ工臨の運転もあるという。GWの準備運動?に両線のD Lネタwith桜掛け持ちツアーを計画した。

この年は金曜が大和(横浜市の西隣)勤務だったので、速攻で仕事を切り上げ22時半に退勤しても帰宅は0時近く。郡山までは東北道に乗れ ばそれほど遠くはないようだが、やはり250qはある。気合を入れてスタートした深夜のドライブも、途中の那須高原SAで力尽きてしまっ た。2時間ちょっと仮眠して5時始動。雲は多目ながら晴れベースという微妙な空模様を気にしつつハンドルを握り、定番要田−三春のオ ーバークロスに着いたのは7時過ぎだった。

いずれ磐東雑客特集でも組もうと考えているので詳細はそのときに譲るが、予想以上に桜も新緑も進みが遅く、昨年なら既に木々が芽吹い ていたこのアングルも今年は冬枯れ色のままだった。列車をアップで撮って即移動。船引三春ICから磐越道で小野までワープし、夏井川 渓谷に沿う県道を走りながらロケハンする。要田よりも標高の高いこの付近は当然春の装いには程遠く、ガックリ。いやはや、今回は原色 DEに赤帯なし雑客で期待していたのに、景色がこれでは話にならぬ…。が、サミットの川前を越えて下り勾配に入ると徐々に様子が変わ ってきた。江田−川前の踏切ではもう幾本も三脚が並んでいる。気になったのでチラリと偵察。すると…新緑にはまだ早いが、バックのト ンネル上には咲き誇る桜!これで決まりでしょう!! 早速機材を降ろしてセッティング。ただし普通のかぶりつきでは撮らない。線路脇の リレーボックス辺りがパニックしているが、ここは頑張って踏切脇から背後の斜面に登り、足場を得る。立ち位置悠々でよろしきかな。ペ ンタ300、マミヤ210、それにF4+80-200とフルセット3丁切り体制で準備は万端。残された不安は足早に動くゲリラ雲だけとなった。定 時、踏切が鳴る。空を見上げると太陽は安定した青空ゾーンに輝いている。もらった!!! ピィィーッと甲高いホイッスルとともにトンネル を抜けてきた「新緑号」は、見事思い通りフレームの中に像を結んでくれた。

 05・04・23 江田−小川郷
 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
  周囲に色味がない中で、ここだけはバックの桜が見事に咲き誇っ
 ていた。一段高い位置からタテアングルで狙う!

Xの手応えを噛みしめてから返しのポイントへ移動。とはいえ一体どこで撮るべきか。一番のハイライトである夏井川渓谷が枯れ木色ゆえ、 場所の選定にはかなり苦しむ。最終的に他の選択肢がないということで、色味がないのは覚悟の上でいつもの江田−川前トンネル上俯瞰に 落ち着き1発撮影。ここから県道を鉄的走りで小野ICへダッシュし、高速で次の要田カーブへ先回り。有名な要田Ωカーブを三春方のト ンネル上から頂戴し、無事今日のミッションは終了した。ちなみに、最後のカットを撮る直前にF4にフィルムが入ってなかったことに気 付いたというのは、私だけの秘密である(汗)。

夕方、郡山市内のディーラーでやや気になっていたプラグを交換。以前3名乗車で飯田線にゲニニ+14系を撮りに行った際、深夜の鷲津駅 前でプラグが寿命を迎え動けなくなった悪夢を思い出し、早めに対処することにした。何しろ今から走るのは人跡稀な福島・新潟の県境。 そんな所で身動き取れなくなったらシャレではすまない。30分ほどで作業は終了し、国道49号へ。磐西沿いに進み、会津若松で夕食。坂下 から252号で六十里を越えれば、目指す飯山線は目の前である。だが待てよ、GW前のこの時期に果たして六十里は越えられるのだろうか? 恥ずかしながら、柳津付近まで走ってようやくこれに気付き、あわてて道の駅で情報収集。残念、六十里はまだ未開通とのことだった。や れやれ49号で新津回りかいな。でも、只見辺りまで行ってしまってから不通に泣くよりはマシだろう(苦笑)。五泉から290号〜351号とつな いで長岡へ。17号に入った辺りで睡魔に負け、適当なところに車を停めてマルヨ体制に入った。



翌朝目覚めると、今日も予報通りの晴れ。いや、雲もなく昨日より安定しているといっていい。ウキウキスイスイで国道117号を長野方面へ。 途中十日町から津南にかけてはまだ道路脇に1m近い雪が残っていた。越後の奥地では春はまだ遠いようだ。7時頃には定番の蓮−替佐の 川沿い区間に到着。今日の工臨は飯山までなので、ハイライトは上今井から蓮までの区間になると思われる。ふと見ると線路に沿う河岸段 丘の斜面には、桜の仲間か一群の白い花。長野はちょうど今が満開らしい。軽くキハ110を撮ってから工臨アングルの探索に出た。

初めにアタリを付けたのが上今井の駅に程近いオーバークロス。緩やかなインカーブを見下ろすと、バックにはちょうど桜がピタリと入る。 レンズはペンタ165でジャスト。確かに撮りやすいこともあり、もう斜面には鉄ちゃんがわらわらと集結し始めていた。ただ、問題なのは光 線状態。北東側から撮ることになるため、通過時刻の10時近くでは限りなく逆光に近くなるのではないか。とりあえずゲバを立てて場所を リザーブし、もう少し周囲を徘徊することにした。このオーバークロスから替佐寄りに進むと、よく知られた道路沿いの桜並木区間になる。 が、線路−道路−桜という配置なので、桜を入れると道路モロのド広角不自然写真になり、人工物をカットするとただの車両写真になって しまう。ロケーションはいいのだけれど、料理するのが難しい…。と、突如天から私を呼ぶ声が!? 見上げると、切り立った斜面の突端から 俯瞰の師匠あきんど氏とケンケン氏が手を振っている。師匠が構えているなら間違いはないだろう。国道を回って両氏のもとに行くと、崖 の下に桜並木とS字を描く線路が広がった。上から見下ろすため道路は丸見えだが、桜の雲海がそれを補って余りある春の舞台を整えてい る。線路の向きからして光線はサイドには絶対当たるはず。これで決定。早速クルマごと移動し、両氏の背後からペンタ400ハイアングル で構えた。崖の上で銀箱に乗るのは5年前の五十猛以来でチト怖いが、Xを撮るためなら仕方ない(笑)。

踏切が鳴る。眼下にチビロクが現れた。慎重にミラーアップしレリーズに指を乗せる。と、バシャン!ストロークの軽さに思わず早切り!! 慌てて巻き上げてもう1発。列車が遅かったこともあり、どうにか事なきを得た(汗)。

05・04・24 上今井−替佐 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
 満開の桜並木を縫うようにDD16+チキ×4の工9161レが登場。併走する道路がやや目障りだが、それを補って余りあるピンクの雲海!こ れぞ春!! ちなみに、背後の陸橋が初めにチェックしたポイント。画面上端でカットしたかったが、これより下に振るとボケ木が入ってしま うのでありますorz。

1時間余りで飯山からの返却単回がやってくる。師匠御一行と共に早朝チェックした蓮−替佐の川沿いへ移動した。道路は写るが普通に川 まで入れて撮ってもよし、川はカットして花を画面にあしらってもよし、工夫の仕方は無数のポイント。少々悩むが、せっかくこの時期な のだからということで若干線路から離れ、ペンタ400&ニコン300で構える。あとは車が併走しないことを祈りながら、主役の登場を待つば かり。が、直前になって鉄カーが猛スピードで突っ込んできて画面奥のカーブの先に路駐した。当然このアングルにいる鉄集団からは激し いブーイング。にもかかわらず車のオトコは知らん振りしてカーブの奥へと消えて行った。もう時間がない。一同ややガッカリの中、単機 のDD16が現れた。

 
左 05・04・24 蓮−替佐 NikonF4s AFNikkor300oF4 RVP100
右 05・04・24 蓮−替佐 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
 300oで撮った方が道路と路駐車をカットできてX。ペンタ400だとあと一歩画面にシマりがなかったか。反省…。

メインの被写体は行ってしまったが、時刻はまだ昼前。桜MAXでドバリ晴れとあらば、これで帰るテはない。長野まで来たことだし、以前か ら気になっていた長野電鉄の2000系を狙ってみることにした。師匠チームは「民鉄やらない信条(笑)」を貫いて中央東線で枝垂桜を撮ると のこと。お互い健闘を祈って別れ、我が車は長電を目指した。

蓮から距離的に近く、かつまともな光線状態で手っ取り早く勝負できそうなポイントを地図で探すと、信濃竹原−夜間瀬の鉄橋がほぼ東西 を向いていてまぁいけそうな雰囲気。2年ほど前のRM誌にも簡単なガイドが載っていた気がする。信州中野付近から国道403号を進み、夜 間瀬川の西側の堤防へ。堤防に出たところで思わず息を飲んだ。川縁に続く桜並木は端から端まで全てド満開!空は青く、背後には高社山 がくっきりと青いキャンパスに稜線を描いている。時刻表を見ると、次の特急は湯田中行き、すなわちここからだと後追いになる。「ケツ 打つなら、横から撮ろう、ホトトギス」(なんのこっちゃ)。最も咲き具合のいい木に接近し、20oで桜ドカン、バックに電車チラリで画面 を構成してみた。

05・04・24 信濃竹原−夜間瀬 NikonF4s AFNikkor20-35oF2.8 RVP100
 川縁を彩る桜並木を横目に、長電の看板特急車2000系が夜間瀬川を渡る。背後の高社山が恐ろしいほどクリアーな1日だった。

折返しの長野行きは鉄橋の袂から普通に編成撮りした。間もなくサイドの光線が薄くなってきたので、場所を移動。初めての長電ゆえアン グルがさっぱりわからないが、そこは野生の勘で勝負するしかない。ブラブラと湯田中方面に車を走らせると、上条の駅付近に編成撮りポ イントがあった。方角から考えるに、夕方にかけて次第に光線が良くなってくるはずである。桜は絡まないが、日が沈むまで立ち位置を変 えレンズを変えながら遊ぶことができた。

欲しがりません勝つまでは式で撮影断食に陥ってしまったので、日没後湯田中のコンビニで食事。そして駅前の足湯でウダウダ。駅でこれ ほどくつろげるのは、陸東の鳴子温泉や北上線のほっとゆだ、中央線の上諏訪くらいだろう。車両X、アングルX、そして温泉など周辺ス ポットもX!この日以来、私の脳内撮影必修リストに「ながでんの2000系」が深く刻み込まれてしまったのだった。Xなツアーは新しい課 題をもたらす。まだしばらく平穏な娑婆の生活には戻れなさそうである。



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