鉄路百景 GALLERY01.鹿島鉄道最後の日々05

GALLERY01 鹿島鉄道最後の日々

5.鹿島鉄道最後の日々

建国記念日の連休が明けた頃から、各車両にさよならのヘッドマークが付き始めた。来る日へのカウントダウンは確実に進んでいるのだ。 普段通りの姿を追い求めてきた者にとっては目障りにも感じるマークだが、「最後の日々」の象徴と捉えて受け入れるしかないのが撮影者 の悲しい性。結局マーク掲出後もかしてつへの訪問は途切れることはなかった。

07・02・05 桃浦−八木蒔 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
誰にとっても鬼門の撮影地というのがある。私の場合、古くは久大本線南由布の由布岳バック50系客レ、紀勢本線伊勢柏崎Sカーブの DD重連などに随分苦戦したものだった。そして、かしてつ末期の鬼門となったのがここ、桃浦の筑波山バックであった。天気にやられた ことはない。常に最高条件で列車を迎えているのに、なぜか撮る度にピンが甘かったり、ブレていたり、露出オーバーだったり。酷いと きにはレリーズが外れてシャッターが落ちず…ということまであった。修行不足といえばそれまでだが、それにしても…。この1発を極 めるまで、ずいぶん手こずらされたものである。



07・02・16 浜−玉造町 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
前ページでお見せした霞ヶ浦バックの67バージョン。2月の鋭い朝日を浴びてキハ714がカーブに車輪を軋ませて行く。

07・02・16 玉造町−浜 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
ヘッドマークはまず旧型から取り付けられていった。キハ431が冬枯れの築堤を行く。紅葉シーズンにこのポイントに目をつけていれば! しかし、鹿島鉄道にもう秋はやって来ない…。

07・02・16 玉造町−浜 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
マークは、431が緑・432がオレンジと各車の色に合わせたものが用意された。伸び放題だったススキを30分ほどかけて伐採し、玉造町の発車 を狙う。



07・03・18 桃浦−小川高校下 PENTAX67 smcPENTAX300oF4ED RVP(+1)
3月に入ると、撮り鉄だけではなく名残乗車の乗り鉄も押しかけ、車内はほんの数ヶ月前までの空気輸送がウソのような通勤ラッシュ状態 が続いた。そこで日中の混雑時間帯を中心に旧型2連2編成が登場!キハ431+432が桃浦を行く。

 07・03・18 借宿前−巴川
 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)

旧型2連のもう1編成はキハ714+602。平日朝しか撮れない714が日中3往復も走行した。早朝は日が当たらない粟借橋で、ド順光の湘南マ スクを撮影。

07・03・18 玉造町−浜 PENTAX67 smcPENTAX400oF4ED RVP(+1)
大型車のダブルは結構迫力がある。玉造町の築堤にてペンタ400で迎え撃つ。3月中旬の日曜日、このポイントも結構な人出だった。

 07・03・18 浜−玉造町
 PENTAX67 smcPENTAX90oF2.8 RVP(+1)

廃止まで一月を切り、ようやく沿線に春らしさが見えてきた。広めのレンズでローアングルから黄色と青のコントラストを狙う。体がよじ れるのを我慢しながら待つこと数十分、菜の花を横目に金太郎ダブルが颯爽と駆け抜けた。



鹿島鉄道と聞いて一番に想像するのが、やはり霞ヶ浦湖畔でのシルエット。特に乾燥した晴れの続く関東の冬は、雪国のようなモノトーン の美しさはない代わりに、グラデーション豊かな影絵を作るには最適の季節である。日中の旧型車撮影が終わった後、この日は夜の帳が下 りるまで桃浦の前後で粘ってみた。

07・01・14 桃浦−小川高校下 NikonF4s AFNikkor50oF1.4 RVP100
定番の国道からの俯瞰もいいが、木の葉の落ちた冬なら木の造形が面白いここがX!地元のベテラン鉄ちゃんの方々にご案内いただき、セッ ティング。冬の午後の低い光線がファインダーをギラギラと照らす。軽いタイフォンが響いた直後、湖のほとりにKRの姿が浮かび上がった。

07・01・14 桃浦−八木蒔 NikonF4s AFNikkor50oF1.4 RVP100
日没間際がオトコの時間、勝負の露出!地元御大御一行と八木蒔寄りの築堤に移動し、下から夕焼け空を仰ぐ。地平低くに 真っ赤な太陽が燃える。間もなく1日が終わろうとしていた。茜色の空に軽快気動車の影が1両、どこか大陸的な情景…。



2月頃から徐々にお別れムードが漂ってきた。終点鉾田は、地元の人々、名残乗車のファン、駅の職員の方々でいつも賑わいを見せていた。 関東の駅百選にも選ばれた瓦葺の重厚な駅舎は、中で営業していた鯛焼き屋さんは、今後どうなってしまうのだろうか。

07・02・16 鉾田駅 NikonF4s AFNikkor20-35oF2.8 RVP100
 
2枚とも 07・02・16 鉾田駅 NikonF4s AFNikkor80-200oF2.8 RVP100

思えば、ここ数年で随分撮影対象だったローカル私鉄が消えていった。2年前の春はのと鉄道の末端や日立電鉄が消え、名鉄600V区間が全 廃された。昨年は4月にちほく高原鉄道が、秋には神岡鉄道が命脈を絶った。そして…。
当たり前の日常が当たり前であるのもあと数日。間もなく鹿島鉄道の線路上から列車が消える。

 07・01・19 石岡南台駅
 NikonF5 AFNikkor80-200oF2.8 RVP100

 07・02・16 巴川駅
 NikonF4s AFNikkor20-35oF2.8 RVP100

 
2枚とも 07・03・18 桃浦駅 NikonF4s AFNikkor20-35oF2.8 RVP100

我々は、ただ消え行く鉄路にカメラを向けることしかできない。1枚でも多くの写真を残すことしかできない。そんな我々を尻目に、今日 も老兵達は黙々と走り続け、静かに記憶の彼方へと走り去ろうとしている。

07・02・16 石岡機関区 NikonF5 AFNikkor80-200oF2.8 RVP100

2007年3月31日をもって、鹿島鉄道は83年の歴史に幕を下ろした。

−完−



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