Memorial GALLERY


 2019.04.06

2006.04.06 上総大久保駅 NikonF4 AFNikkor80-200oF2.8ED RVP100

先日国立新美術館に「トルコ至宝展−チューリップの宮殿トプカプの美−」を鑑賞しに行った帰りに、ふとミッドタウンにある富士フィルムスクエアに 立ち寄ってみた。話題の中版ミラーレスをチラリと冷かすつもりだったのだが、そのギャラリーで風景写真の大家竹内敏信氏の写真展「日本の桜」が開 かれていた。大御所が長年に渡って撮り続けた力作の数々は、畑違いの私にも圧倒的な存在感で迫ってきた。古の時代から、春の訪れとともに我々の琴 線をくすぐる薄紅色の花びら。自らの撮影歴を振り返って、人に誇れるほどの桜の写真は一体どれくらいあるのだろう。

記憶を辿ってすぐに出てくるのは、今から13年前、2006年春の小湊鐡道である。この年は、これ以上ないタイミングで晴れと満開と休みが重なった。週 末、満を持して早朝から上総牛久以南の末端区間に車を走らせる。終日雲一つない快晴に恵まれ、上総大久保・月崎・飯給・高滝と各駅で見頃の花と青 空を背にクリームと赤の気動車を仕留めて大満足。さらに夕方、陽が落ちてからは夜桜バルブにチャレンジする。養老渓谷行きを月崎で見送って、返し を狙いに上総大久保の駅にやって来た。

ホームの端にある見事な枝振りの桜は、小湊鐡道職員の方が設置したライトに照らされ、闇夜に妖しいまでの輝きをもって浮かび上がっていた。これを メインに構図を決めて待つことしばし、踏切が鳴ると、遠くからエンジン音が近づいてきた。小さな無人駅のことである。客の乗降がなければ停車時間 などほんの僅かに違いない。デジと違って経験と勘で露出値をはじき出し、後は気合の一発勝負。2灯のテールライトを光らせて駅に佇む気動車に、そ っとシャッターを切った。



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