Memorial GALLERY
2016.09.15
2000.09.15 下杭子−上店 MamiyaM645SUPER SEKOR 210oF4N RVP(+1)
高校時代から世界史が好きだった。いや、正確に言うと、受験生になってから世界史の面白さに目覚めた。子どもの頃は戦国武将マニアになったり百人一首にハマったりと 日本史分野に惹かれることが多かったが、予備校で良き師に出会って世界史のスケールの大きさに魅せられ、一気に視野が広がった。ギリシアからインド北西部までを瞬 く間に征服したアレクサンドロス大王、地中海世界を支配下に置き高度な建築技術で一大文明を築き上げたローマ帝国、モンゴル高原を拠点にユーラシア一帯を制圧し、 陸海の循環ネットワークでこれを一体化しようとしたモンゴル…歴史地図を眺めるだけで思わず胸が高鳴るではないか。そんな経験があったからだろう、大学3年の夏休み には「鉄もでっかく行かなければ!」と海外遠征を決意した。関西-D.W先輩が共著で出版した写真集『Far Whistles』にも感化され、狙いは現役の蒸気機関車に。とす れば、あの頃全世界の鉄ちゃんが熱い眼差しを送っていた中国内モンゴル自治区集通鉄路の経棚峠のお立ち台を目指すのは、もはや必然であった。
聖地熱水の丘からは、経棚駅を通過する付近から前進型重連の2条の煙が見えてくる。長編成の貨物を従えた大型蒸気は、単調なブラスト音を響かせながら、 火星を思わせ るような岩肌むき出しの山脈を背に大築堤を東に進み、立ち位置の真横を過ぎてはるか遠方でターン、2度の大Ωカーブを描きながら眼下のコンクリ橋に再び姿を現す。フ ァインダーから列車が消えるまで、その間実に40分余り!ブローニー15枚撮りのマミヤ645でワインダーを回しながら、フィルムを交換しながら、雲台をパーンし、構図を 整え直し、1列車で20カット以上を撮った。今回は、丘から街道と集落を挟んだ対面の築堤を行く姿を中望遠で切り取った1枚を。夏場は煙が出ないよ…と事前に聞かされ ていたが、それでも内モンゴルの9月中旬はすっかり秋。朝一番の列車は白煙をたなびかせてやって来た。
あれから16年、受験生時代のインパクトが忘れられず予備校に世界史講師の職を得て、その後紆余曲折を経て母校で高校の教員になり、今も世界史を学び教える日々が続く。 その間に、国内では撮るものが激減した。次なるブームは再び海外鉄ちゃんか?仕事と趣味が結びつくようになる日も近いかもしれない。
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