Memorial GALLERY
2014.02.10
1996.02.10 武蔵白石−大川
Canon旧F−1 FD200oF4 RDPU
過去に幾度かこのコーナーで取り上げた鶴見線のクモハ12。 当時でも定期運行の旧国は小野田支線のクモハ42とコイツだけだったので、物珍しさから中学生の 頃以来何度も大回り乗車で乗りに行った。 ニス塗りの床に独特の座り心地の分厚いシート、車内のど真ん中に立つポール、そして暖かな光を放つ白熱灯。吊り掛 けサウンドをBGMに工場地帯の旅へと誘うぶどう色のタイムマシーンは、どんなアミューズメントパークよりもわくわくする最高のアトラクションだった。
彼らの引退が間近に迫った2月上旬の土曜日、キーンと冷え込んだ早朝の京浜工業地帯は、週末とあって人影もまばらだった。 白煙たなびく煙突と高くそびえる 高圧鉄塔の間から鋭い朝日が差し込む頃、武蔵白石を出てすぐのカーブを狙う。103系では通過できないこの急曲線が、17m車体を持つ老兵をここまで生き永ら えさせてきたことを考えれば、僅か1q余りの支線の中でもハイライトというべきポイントである。
叔父に借りたキヤノン旧F−1にFD200oF4を付けて、金網の隙間にレンズを突っ込んでアングルを固定する。微妙な体勢ゆえ三脚は使えず、手持ちでの一発勝負 である。 間もなく背後で踏切が鳴り、空気を震わせるような重低音を響かせて褐色のヌシが現れた。正面に光が差し込みむのは一瞬のみ。リベットだらけの顔面 がギラリと光る刹那を切り取った。今思えば左右のバランスと右端の影落ちがやや気になるところだが、AFもモードラも持たなかった当時の高校生にそれを 言っても詮無いことと諦めている。
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